“ワキガ”の治療

“ワキガ”の治療

日本人の約10人に1人が「ワキガ」であると言われています。
ワキガは臭いが強く、周囲に不快感を与えてしまい私生活にも影響を及ぼすことから、深く悩んでいる方が多い症状です。

ワキガとは?

ワキガは正式には「腋臭症」といい、ワキの下から出る独特の鼻をつくような強い臭いのことです。

欧米では多くの人がワキガ体質といわれ、単に腋臭や体臭は生理的な現象の1つとされ、不快に思う人も少なくあまり問題にならないようです。そのため治療を受ける人もほとんどいません。しかし、日本では少数派のため、かえってワキガで悩んでいる方が多くいるようです。

ワキガの比率に男女差はほぼありませんが、若干女性が上回っています。女性は男性よりも臭いに敏感なことから、ワキガの治療を受けるのも女性の方が多い傾向にあります。また、女性の方が性徴が早いことから発症も早いと言われており、思春期から始まって更年期(約40〜50代)以降軽減していきます。
ワキガは他人に移るということはありませんが、両親、祖父母、兄弟にワキガの症状がある場合、自分もワキガになる可能性はあります。両親どちらかがワキガだと約50%、両親共にワキガだと約75%の割合で子どもに遺伝すると言われています。

また、ワキガのように臭いは気にならないが汗の量がひどく多いといった「多汗症」という症状がありますが、ワキガの方には多汗症を伴っている方が多い傾向にあります。

臭いを伴う部分は限定されていますが、大量に汗をかいた後や、自分の汗の臭いが気になったり他人から指摘されたりなど、自覚症状・他覚症状でワキガを発症したように感じ、治療を考える人が多いです。臭いは汗の量に比例するため、発症時期は汗をかきやすい夏などの暑いシーズンが多いです。

今では症状の程度に合わせた治療がいくつかあり、自分に合った治療法でワキガは治すことができます。
臭いが気になって人に近づけない、ワキガや汗のシミが服に付いていないかが心配、ワキの汗や臭いを改善させたい方に治療をおすすめします。

原因

ワキの汗が出る汗腺には「アポクリン腺」と「エクリン腺」があります。
全身には約400万個の汗腺があるといわれており、そのうち100万個がアポクリン腺、残りの300万個がエクリン腺で、ワキガはアポクリン腺から出る汗が原因です。

<エクリン腺>
主に体温調節の働きをしていて、自律神経(交感神経)に支配されています。エクリン腺から出る汗はほとんどが塩水で、アンモニアも少量含まれていますがあまり臭いはなく、色もありません。サラサラしていて直接皮膚から分泌されます。

通常よりも量が多い場合に多汗症と診断されます。汗の量が多いと皮膚の雑菌の活動を活発にしてしまうため、臭いを発生させやすい状態をつくることになります。


<アポクリン腺>
アポクリン腺から出る汗は低級脂肪酸という皮脂を含み、これを皮膚表面の細菌によって酸化され、さらにアンモニア等が加わることで不快な臭いが発生すると言われています。アポクリン腺からの汗自体は無臭です。

少しベタつき感があり、たんぱく質・脂質・糖質・鉄分・アンモニアなどの成分が含まれています。やや黄色味があり、ニオイもあり、ワキガだけでなく汗じみ・黄バミの原因にもなっています。
このアポクリン腺はワキ以外に、耳の中(外耳道)、乳輪、陰部など特定の場所に集まって存在します。耳あかが湿っていると、アポクリン腺の分泌物が多いということになります。また、アポクリン腺と皮脂腺の分泌液は毛穴を通って皮膚の表面に出てくるので、ワキなどの毛が多い人はこれらの腺の数も多いと推測できます。

アポクリン腺は性腺の1つ(いわゆるフェロモン)と言われている為、思春期に発達し、セクシャルな機能もありますが、その程度は個人差があり、程度が強ければワキガと診断できます。中年以降に軽減していきますが、加齢と共に加齢臭が発生してくるので、かえって中年期に臭いが強くなるというケースもあります。

アポクリン腺は人によって量や大きさが異なり、量が多く大きさが大きいほどワキガの臭いが強くなると言われます。ワキガは遺伝する可能性が高く、アポクリン腺の数が多い体質を受け継いでいる場合があります。
また、体臭の強い欧米人は、日本人の数倍アポクリン腺が多いといわれています。

治療法

手術による治療

手術は何よりも有効な治療法ですが、リスクを伴うケースも多いです。
他の美容外科手術と違って、効果が不十分な手術ほどキズがきれいで、きちんと汗腺を取れば取るほど、リスクは高くなり、キズあとは残りやすくなります。

①汗腺剪除手術(剪除法)
日本におけるスタンダードな手術法です。皮弁法とも呼ばれています。
ワキの中央部1、2ヵ所、約2.5~4センチの切開から皮膚を裏返して直視下に確実にアポクリン腺をハサミで除去します。約80〜90%の除去を可能とし、一度の治療で臭いがほとんど気にならなくなります。
傷跡はワキのしわに沿った傷跡となるため、ほとんど目立ちません。様々な治療法の中でもワキガに対する治療効果は最も高いと言われ、併発しやすい多汗症にも効果があります。
抜糸や術後経過の診察のために通院が何回か必要となります。保険が適用されるため、自己負担額が抑えられます。

②皮膚切除
ワキの下の有毛部の皮膚を切り、皮膚を縮めるという原始的なやり方です。以前は皮膚切除が主体とされ、臭いの抑制は大いに期待できますが、傷の引きつれが強くなる恐れがあります。
保険が適用されるため、こちらも自己負担が少なく抑えられます。

③クアドラカット法
先端にシェーバーが着いた吸引管を、脇の下に入れた小さな切れ目から皮下に挿入します。先端のシェーバーでアポクリン腺を切除しながら吸引し、取り出す方法です。
以前は剪除法より効果が劣るとされていましたが、シェーバーの改良が進んだため、現在ではほぼ同じ効果が得られます。傷跡が小さく済み、術後の経過が早く、剪除法よりも1〜2週間早く復帰できてトラブルも少ないです。
しかし保険が適用されないので、手術費が高くなります。

④超音波法
脇の部分を1cmほど切開して、超音波メスを皮下に挿入します。
超音波を使い、剝離と汗腺除去を同時に行う治療法です。

手術以外の治療法

手術のリスクを考えると、効果は減ってしまっても別の治療法を選択する人も多いです。

①ボトックス注射
ワキガの治療をしたいが、手術は避けたい人が多く受ける治療法です。アポクリン腺のある箇所に注射してから4~7日後から臭いが抑えられ、6~10ヶ月ほど薬剤の働きが持続します。汗を多くかく時期だけ注射をするということができます。
手軽に受けられますが、治療費は自由診療になるため高額です。

②ミラドライ
メスを使わず、合併症も少なく、半永久的に治療の効き目が持続する治療法です。
電子レンジなどにも用いられているマイクロウエーブを活用して、汗腺にダメージを与えます。アポクリン腺とエクリン腺のどちらにも作用するため、臭いだけでなく、汗の量も抑制する働きも期待できます。

③レーザー治療
アポクリン汗腺自体をレーザー治療で破壊し、ワキガの臭いを元を断つことができ、汗も大幅に軽減されます。再発もなく根治治療が可能です。
施術後は、赤みや腫れもなく、圧迫帯や絆創膏などの処置も必要ありません。ダウンタイムが特にないので、すぐにいつも通りの生活ができます。

セルフケアで改善

実は治療をせずとも、生活習慣の中に対策を取り入れるだけで解決することもあります。ワキガに悩み始めて病院にすぐ行く前に、セルフケアで様子をみてみるのもいいでしょう。

*こまめにシャワーを浴びたり清潔を保つ
細菌や分泌物を取り除き、常にワキを清潔に保つことを心がけましょう。日中のシャワーが難しい場合は、アルコール綿で拭き取るのもひとつの手段ですが、肌の弱い方は避けましょう。アルコール綿は一度拭くと効果は約12時間持続するといわれています。

*除毛・脱毛する
脇毛が無くなると汗がたまりにくくなり、清潔な状態を維持することで臭いも抑えられます。

*制汗剤を利用する
制汗剤によって、汗や雑菌を抑制させます。しかし、ワキガの臭いと制汗剤の香りが混合されると、さらに強い臭いが生じる恐れがあるので、制汗剤を選ぶ際は無香料タイプがおすすめです。
また、汗をかいた状態で制汗剤を使用しても効果はないので、使用する前は汗を拭き取りましょう。

*通気性のいい服を着る
ワキは熱がこもりやすく、通気性が悪い部分なので、通気性のよい服を身に付けるようにしましょう。汗を吸い込んだ衣服をそのまま着用していると、衣服に雑菌が繁殖し、衣服の臭いがきつくなる原因になります。

*アルカリ性の食生活を心がける
ワキガの臭いがきつくなるのは、体が酸化して、抵抗力が低下していることが考えられます。そのため、酸化しやすい食べ物(肉などの脂質の多いもの)を多く摂取し続けると、体内が酸性に傾きやすくなります。
洋食にはワキガの臭いを強くする食べ物が多いので、野菜類や和食中心の食事がおすすめです。臭いを抑制するアルカリ性の食べ物には、海藻類、梅干し、緑黄色野菜などが挙げられます。

*精神状態の改善
ストレスを溜めたり、緊張をしすぎると自律神経のバランスが崩れ、汗やにおいが増えます。規則正しい生活を心がけ、安定した精神で過ごしましょう。

まとめ

ワキガはなかなか相談しにくい症状ですが、汗をかく度に気になってしまい、私生活にも影響を及ぼしてしまうので治したいと思う人は多いです。

普段の過ごし方や、生活の見直しを行ってもワキガが改善がされない場合は、病院で治療を受けましょう。臭いが強くならない対処法はあっても、汗腺を減らすことは自力ではできません。

ワキガの程度や、自分がどれくらい治したいのか、または予算など、様々な観点から治療法を選ぶことができます。
確実で半永久的な効果を求める場合は切開を伴う手術、大掛かりな手術は避けて治療したい場合は注射やレーザーを使用した治療法がいいでしょう。

ワキガは特に汗をかく夏のシーズンに症状が悪化します。治療を検討している方は、暑くなる季節の前に治療を受けることをおすすめします。
ワキガが治れば、臭いや汗じみを気にせずおしゃれも一層楽しめるようになるでしょう。自分の自信にも繋がるので、ワキガでお悩みの方は、まずは病院で相談してみるところから始めてみてはいかがでしょうか?

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