人の顔は皆それぞれ異なって個性がありますが、実は耳の形もそれぞれ個性があるのです。そして、顔にコンプレックスを抱く人がいるのと同じように、耳に対してコンプレックスを抱く人がいます。
耳のコンプレックスの要因である”立ち耳”は治療で修正することができます。
立ち耳とは?
立ち耳とは、正面から顔を見た時に、耳が正面を向いて立った状態の耳のことです。両耳とも正面を向いている場合もあれば、片耳だけの場合もあります。
医学的には、側頭部と耳介の角度が30度以上である場合を立ち耳と言います。
耳が横に張り出し、広がっているように見えるので、耳が異様に目立ったり、顔が大きく見えるなどの顔のバランスに影響を与えます。これにより、人の視線が気になってストレスを感じてしまう方もいらっしゃいます。
見た目の面だけでなく、眼鏡やマスクがかけずらかったり、ヘッドホンが耳に当たって痛みを感じる、真後ろからの音が聞こえずらいなど、生活面でも支障をきたす場合もあり、お悩みはさまざまです。
<原因>
立ち耳の原因は、耳の「対耳輪」の盛り上がりが生まれつき小さいためです。「対耳輪」とは耳の軟骨のことで、これが形成不全で小さいと折れ曲がり弱く、耳を頭側(後方)へ寝かせる力が働かないために、耳が前を向いてしまいます。
つまり、対耳輪の折れ曲がりを作ることで立ち耳を修正することができます。
<その他の耳介の疾患>
立ち耳以外にも、耳介の疾患が存在します。
*コップ耳
耳介軟骨が変形して、耳介がちょうどコップのように丸くなってすぼまって見える状態をコップ耳と言います。「カップ耳」とも呼ばれています。
*スタール耳
スタール耳とは先天性の耳の変形の一種です。通常、耳介の上部は丸い形状をしていますが、耳介の上部外側がとがった形状になっている状態をスタール耳と言います。
これは軟骨の曲がる方向に違いがあるためで、見た目以外には生活していて支障はありません。しかし、西洋では悪魔的な印象を持たれるため、見た目が気になる人もいます。
*折れ耳・垂れ耳
耳の軟骨が変形しており、耳の上部1/3が前方に垂れ下がってしまった状態の耳を「折れ耳」や「垂れ耳」と言います。耳自体と、音の聞こえ方にも問題はありません。
ただし、折れ曲がりが重度の場合は、変形した軟骨の影響でメガネやマスクを使用することが出来ないなどの問題が生じる場合があります。 生活に影響がなければ治療の必要はありません。
立ち耳の修正
立ち耳の修正方法には「切開法」と「埋没法」があります。
切開法の場合、耳の裏を切開し、耳を寝かせた状態で縫い合わせていきます。傷跡も目立たず効果は半永久的です。
埋没法の場合、切開はせずに耳に糸を埋め込んで固定させ、折れ癖をつけます。
いずれも手術方法は大きく異なりますが、どちらにもメリット・デメリットがあります。
また、耳の形の修正の多くが”美容的な問題”と見なされるため、健康保険の適応とは見なされないものも多く含まれます。しかし、生活に支障をきたす形の異常は健康保険の対象となるので、まずは専門医に診察してもらい、自分に合った方法を選択しましょう。
<おすすめの方>
*立っている耳を寝かせたい
*正面から見て耳が目立つ
*立ち耳のせいで顔が大きく見える
*耳と顔のバランスが気になる
*左右の耳の立ち方の違いが気になる
*ヘッドホンなどをつけた時に耳が痛い
*立ち耳にコンプレックスを抱いている
*立ち耳が気になってアップヘアができない
切開法
立ち耳の治療のほとんどの場合、切開法を用いての手術が一般的です。
耳の後ろ(耳介後面)を縦に数センチ切開し、耳の形を整える方法です。
耳の裏側の付け根の皮膚を3~5cm切開し、耳介軟骨の後面を剥離します。耳介軟骨に3、4針縫合糸をかけて軟骨を矯正して対耳輪の突出形態を形成します。これによって耳介全体が後ろに倒れます。
希望する耳介の角度は調節できるので自然な形態が得られ、軟骨の形を整えることも可能です。
しかし、耳甲介が大きく発達している場合は、角度の調節に限界があります。
耳の後ろで手術を行うため傷跡は目立たず、一度手術を行えば半永久的な効果が期待できます。
<施術の流れ>
①カウンセリング
医師とカウンセリングを行い、術後のイメージを確認します。
②施術
症状に合わせた手術を行います。症状にもよりますが、施術時間は片耳で約45〜60分です。
⑴皮膚の切開部分や、軟骨の形成箇所に目印をつけます。
⑵耳の表面に局所麻酔を行います。
⑶耳の後ろを2~3cmほど切開し、耳介軟骨の後面を剥離します。
⑷必要であれば軟骨に3〜4針、縫合糸をかけて矯正し、固定します。
⑸左右のバランスを見て、皮膚表面を縫合し、突出形態を形成します。
③術後
医療用のガーゼとテープで患部を1日保護します。入院の必要はなく、終えたらそのまま帰宅可能です。(※変形が重度な場合や、小児の場合は入院が必要となることがあります。)
また、術後約1週間で抜糸を行います。
<リスク・注意点>
*痛み、腫れ、内出血が起きることがありますが、5〜7日ほどで落ち着いてきます。
*メイクは当日、シャワーは翌日〜3日目から、入浴は抜糸後から可能です。なるべく患部は濡らさないよう注意しましょう。
*施術日~3週間ほどは、就寝時は横向きではなく仰向けに寝るようにし、長時間の眼鏡の使用も控えましょう。
*患部が刺激されるような運動は1ヶ月ほど控えましょう。
*飲酒は2〜3日ほど控えましょう。腫れがある場合は1〜2週間は控えましょう。
埋没法
切らない方法での立ち耳修正です。耳介軟骨を切らずに糸を埋め込み、クセ付け・固定をし、対耳輪の折れ曲がりを形成する方法です。
切開をしないので、抜糸の必要がありません。
最大のメリットは、万が一希望が変わったり、思い通りの仕上りにならなかった場合はもとに戻すことができることです。軽度の立ち耳や、切開法が不安な方、ダウンタイムが少ない方法を希望する方におすすめの施術です。
<施術の流れ>
①カウンセリング
医師とカウンセリングを行い、術後のイメージを確認します。
②施術
症状に合わせた手術を行います。症状にもよりますが、施術時間は片耳で約5〜15分です。
⑴形を確認しながらマーキングします。
⑵耳の表面に局所麻酔を行います。
⑶耳介に1~2mmほどの切れ目を入れて、後ろに折り曲げてナイロン糸で2~3ヶ所埋没縫合していきます。細い糸を使用すので、傷が残る心配は必要ありません。
③術後
入院の必要はなく、手術を終えたらそのまま帰宅可能です。
抜糸も不要なので、術後の通院の必要もありません。
<リスク・注意点>
*痛み、腫れ、内出血が起きることがありますが、3〜7日ほどで落ち着いてきます。
*シャワーは当日から可能ですが、洗髪などの際は耳に水がかからないようにしましょう。また、入浴は手術当日または翌日から可能です。
*飲酒は2〜3日ほど控えましょう。腫れがある場合は1〜2週間は控えましょう。
*切開法と違って、糸で留めている方法になるので、永久に糸がゆるまない、切れないという手術ではありません。立ち耳が重症度の場合や、長い時間が経過すると、糸に負担が掛かり切れやすくなり、後戻りの可能性があります。
*施術日~5日間ほどは、就寝時は横向きではなく仰向けに寝るようにしましょう。
まとめ
人の耳にも個性があり、生まれつきそれぞれ形も大きさも異なります。お顔のコンプレックスであればメイクで誤摩化したりすることができますが、耳は自力で形を変えたり、誤摩化すことは難しいです。
立ち耳の場合、耳の存在が目立ってしまったり、正面から見て横に張り出して見えることから、顔が大きく見えたりなど外見において気になってしまうことがあります。それだけでなく、ヘッドホンをすると耳が痛くなったり、眼鏡やマスクが耳にかかり辛かったりと生活にも影響が出てきます。
自力では修正できないことから、コンプレックスとして抱え込んでしまう方もいるのではないでしょうか?
しかし最近では、立ち耳は幼く可愛いイメージがあったり、髪をおろした時に髪の隙間から見えるが可愛いという印象を持つ方もいます。
人によっては立ち耳は憧れる個性にもなるので、自分のチャームポイントとして捉えてみるのも良いでしょう。
しかし、コンプレックスとは自分にしかわからない辛さや苦しさがあるものです。
医療の力を使えば立ち耳はすぐに修正ができます。立ち耳の程度によって治療も異なるので、立ち耳でお悩みの方は、まずはクリニックで相談してみてはいかがでしょうか?
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