バストの悩み
近年、日本の食生活や生活スタイルが変化したことにより、体型も欧米なみのプロポーションの女性も増えてきました。形の良い適度にボリュームのあるバストは魅力的であり、大きなバストに憧れて豊胸手術をする方がいる一方で、バストを小さくしたいと思う方が出てきました。
大きなバストであると様々な悩みがあります。肩こりや猫背、頭痛や吐き気に悩まされる他、「市販のブラジャーが使えない」「息苦しい」などがあります。運動時にも障害が現れ、大きなバストが下垂してくると、乳房の裏側の皮膚が胸の皮膚とすれあって皮膚炎を起こすこともあります。これを防ぐためにブラジャーを用いると、乳房の重さのためにブラジャーのひもが肩にくいこんで痛かったりと、小さな胸の方よりも悩みは深刻です。
以上のように、バストが垂れてしまって形が崩れてしまう外見的な悩み以外にも、このような苦痛から逃れるために乳房を小さくする「乳房縮小術・乳房固定術」が行われます。これは大きすぎて垂れてしまう場合や、授乳、年齢と共に下垂してきた場合にも有効で、体や骨格のバランスに合わせて美しくリフトアップすることが可能です。この手術では、男性のような胸の形にまで縮小できます。
手術をすることによって、若々しくて綺麗な形状の乳房が得られます。勿論、乳房のボリュームを減らすことも可能で、乳房下溝付近の「汗がたまる」などといった症状も改善が期待されます。
<おすすめの方>
*加齢・授乳などで下垂したバストをどうにかしたい
*張りのある若々しいバストにしたい
*上向きのスッキリとしたバストにしたい
*バストをサイズダウンさせたい
*バストの形を整えたい
*垂れた部分の擦れ・湿疹・汗疹などの皮膚トラブルがある
*大きなバストが原因で、肩こりや猫背に悩んでいる
乳房縮小術・乳房固定術
【乳房縮小術】
大きすぎる胸を小さくする方法で、「胸が大きく下着を選びにくい」「肩こりが酷い」「乳輪が大きい」などのお悩みがある方にお勧めです。
乳房縮小術は下垂してしまったバストを修正する乳房つり上げ術とともに適用されることもあります。
バストは皮膚・脂肪組織・乳腺で形作られています。バストを小さくして吊り上げるには、この3つの組織をバランスよく吊り上げることが必要です。バストが下垂してる場合には、バストの上部の組織が足りなくなっているので、その部位をふっくらときれいにすることにより、ハリのあるバストをつくることができます。
術式と乳房の大きさによって異なりますが、手術に要する時間は通称約1〜3時間です。局所麻酔と静脈麻酔を併用して行います。抜糸は1週間から10日後を目安に行います。
なるべく傷を小さく、目立たないようにするために、さまざまな方法があります。乳房の下垂や肥大の度合い、希望する乳房の大きさなどを考慮し、手術方法をカウンセリングで決定していきます。手術後の傷が乳輪の下から逆T字型になる術式がとても多く採用されます。また、Gカップを越えるような、巨大なバストに対しては乳頭から乳房下縁までの距離が長くなり過ぎているため、この場合も逆T字型の切開を用いられます。
乳輪周囲のみを切開し、余剰な乳房組織を切除する方法もありますが、術後の乳輪の拡大や乳輪周囲の傷が目立つことがあるなどのデメリットがあります。
【乳房固定術】
別名「乳房吊り上げ術」とも言います。出産、授乳経験によって大きかった胸が加齢とともに下垂した方など、大きさに関係なく吊り上げることができます。下垂した乳房の皮膚をつまむようにしてハリを出すことで、形の良い若々しいバストに戻す方法で、胸の若返りが期待できます。
下垂したバストはプロポーションを崩してしまうものですが、一般的には女性の方の場合、出産や授乳を経て、年齢と共にどうしてもバストが下垂してきてしまいます。この手術では術後の授乳には差し支えありません。
乳房固定術では、乳輪・乳頭の位置を引き上げる事で、症状を改善しますが、乳房縮小術とは違い、大きな皮膚や乳腺組織の切除はあまり必要ありません。場合によっては、乳輪周囲の切開線を乳輪縁より内側にとり、乳輪を縮小することもできます。また、下垂の症状の程度や状態によって、術式も異なります。
乳房のしぼみが顕著な場合には、シリコンバック豊胸や脂肪注入による豊胸術を併用すると、より美しいバストに仕上がります。
手術方法
逆T字切開(Inverted-T切開)
乳腺組織・脂肪が多く、なるべく小さくしたい方に適した手術法です。欧米では一般的な手術です。高度に下垂した乳房や、大きな乳房の縮小も無理なく行う事が可能で、幅広い方に対して行います。
しかし、乳腺組織の一部を切除するので、術後は授乳が困難になる可能性があります。これから出産を予定されている女性には勧められません。
肥大した乳腺の一部と脂肪、余分な皮膚を切除してバストサイズを縮小した後、持ち上げるようにして切り取った傷口を縫い合わせます。傷口の長さは、縮小するバストの量が大きくなるにつれて、長くする必要があります。
バストの先の方の皮膚と乳腺を切除しますが、その場所に乳輪・乳頭があれば上の方に移動させなければなりません。このとき乳輪もバストの大きさに比例して大きくなってしまうので、バランスよく小さくして血行を保ったまま上方へ移動させる必要があります。
一番傷口が短いもので乳輪の回りに丸い傷跡、そして乳輪からバストの下に向かって縦に傷を伸ばしていきます。更に、乳房下線(アンダーバスト)に沿って横に傷を伸ばすこともあります。そのため、乳輪の下に逆T字の傷跡が残りますが、半年~1年ほどで目立たなくなります。
<手術手順>
①切開範囲のマーキングを行います。
②マーキングしたラインに沿って、表皮と余剰脂肪を切除します。
③乳腺組織や脂肪などを集めて、上方に移動させながら、切開の外周を巾着縫合します。
④外周表皮は巾着縫合により、乳輪の周囲に寄ってきます。
⑤乳輪周囲で再び縫合を行って終了です。傷跡は乳輪周囲に隠れるため、ほとんど目立たちません。
ドーナツ状切開
乳輪の周囲の皮膚をドーナッツ状、もしくは三日月状に切除し乳輪周囲で縫合します。軽度~中等度の乳房下垂の方や、乳腺や脂肪の切除が不要な場合に適している手術法ですが、脂肪は必要に応じて切除することもあります。術後の授乳には差し支えありません。この方法では乳輪の大きさも小さくすることが可能です。
外側の皮膚の裏側に糸をかけ、巾着袋の口を閉じる要領で引き絞って縮めて、縫い合わせます。下垂の改善には限界があります。
傷は乳輪の周囲にしかできないので目立ちにくいですが、乳輪の周りに細かいシワができてしまいます。多くの場合は、時間と共に目立たなくなっていきますが、人によっては目立ってしまう又は時間と共に戻る場合もあります。
特に傷を小さくしたいがために、無理にこの方法を選択した場合には、この細かいシワが残ってしまう傾向にあります。
<手術手順>
①切開範囲のマーキングを行います。
②デザインに沿って、乳房の表皮と余剰脂肪を切除します。
③乳房下部から余剰脂肪や乳腺の一部を切除します。
④切開を行った範囲を逆T字になるように縫合していきます。その際、上部の円形の部分に乳輪が来るように挙上します。
⑤乳輪周囲、乳房下部に掛けて丁寧に縫合を行って終了です。
縦切開法(Vertical切開)
中等度の乳房下垂の方や、乳房縮小を希望する方に適した方法です。傷痕が乳輪周囲と縦のラインのみで、乳房下溝にできません。そのかわり大きく取りすぎると傷の端が盛り上がるなどして、修正が必要となる事があります。
ドーナツ状切開に加え、たるんだ皮膚をもう少し切除して、バストを引き締める方法です。乳輪を小さくすることも可能で、バストを小さくする場合は乳腺・脂肪組織を切除し小さくすることができます。脂肪吸引を併用することもあります。ドーナツ状切開よりも傷が長くなります。
<手術方法>
①乳輪周囲から乳房下部に掛けて切開する範囲をデザインします。
②理想のラインまで乳房を引き上げます。
③切開ラインに沿って、皮膚を切除します。
④乳房下部の余剰脂肪と乳腺を一部切除します。切除量は下垂の程度により決定していきます。
⑤左右の脂肪層を縫合します。
⑥皮膚を縫合し、終了です。傷跡は乳輪周囲と縦方向の傷跡のみになります。
リスク・合併症など
*経過観察を3ヶ月〜6ヶ月に渡って数回行うので、通院の必要があります。経過観察のための通院頻度は患者様や病院によって異なります。
*施術部位の血液貯留(血腫)、感染、乳頭の知覚障害が起こる場合があります。
*切開創が大きくなる場合、乳輪・乳頭の血流障害や皮膚の壊死が起こる場合があります。
*元々、女性の乳房の形状、大きさ、位置は左右で異なっているのが普通です。
もちろん術前のデザインはカウンセリングで患者様と相談しながら進めますが、完全に揃えることは難しいです。
*手術後、加齢により下垂などの変化が引き続き起こる可能性があります。
*術後の浸出液や血液を胸に貯めずに、外に排出させるための管(ドレーン)を付けます。通常は、2~3 日程で抜去となります。
*スポーツブラや柔らかいタイプの物であれば、ドレーン抜去後から使用可能です。ワイヤー入りのものは1ヶ月使用を控えましょう。
*シャワーはドレーン抜去後(2~3 日)から可能です。
*抜糸まで、サウナや激しい運動、飲酒などの血流を活発にする行為は控えましょう。
*喫煙は感染増加の原因になり、他にも組織の血行への悪影響、麻酔への悪影響などがあるので控えましょう。
*手術をすることで腫れが発生し、感染の危険性もゼロとは言い切れません。
*手術操作によって細かい血管が傷つくと皮膚の下で出血し乳輪周囲~胸全体が紫色になりますが、1~2週間で消失します。切開部~胸全体に出る可能性があります。
*内出血となるケースがありますが、時間の経過とともに治ることがほとんどです。
*手術直後は切開部分の赤みができ、目立たなくなるまでに時間がかかることもあります。
*乳輪の縁に沿って切開する場合や、乳輪の下縦方向に切開する場合などは、縫合した部位に傷跡が残ることがあります。
*バストや手術部位に不要な負担をかけないためにも、術後1週間は両腕を肩の高さ以上に挙げないようにしましょう。
*運動は術後約3週間から可能です。
*医学的に適切な基準値をもとにして乳房縮小を行うので、具体的なサイズ指定の希望には応えられない場合があります。
まとめ
乳房縮小術・乳房固定術は血液循環や神経の働きに障害を与えないように行うため、技術的に非常に難しい手術です。ただ小さくするだけではなく、仕上がりの美しさも追求するためドクターの経験が問われます。
乳房縮小術は、理想のバストを手に入れられるだけでなく、乳輪や乳頭の引き上げもできます。バストを小さくすることで、肥大したバストが原因だった肩こりや猫背も同時に低減させることができます。
しかし、乳房縮小術・乳房固定術はそれなりに規模の大きな手術で、乳がんの手術と変わらない規模です。手術時間もそれなりに長時間に及び、体への負担も大きいです。そのため、バストに感覚異常や傷跡が残ったりなど様々なリスクがあること、ダウンタイムが長いことをよく理解した上で手術を受けることをおすすめします。
また、手術方法によっては、手術後に授乳が困難になることがあるので、手術の方法とタイミングもよく考慮しましょう。
このように生活に支障を来し、悩める方も多い状況ではありますが、残念なことに病気ではないので、いずれの手術方法でも大きすぎる乳房を小さくする治療には健康保険は適用されません。現時点では、美容外科で自費で手術を受けるしかありません。
手術を受けるに当たって多くの不安が生じる可能性がありますが、大きなバストによる悩みは日々続いてしまい、何かと気になってしまいます。
解消するには手術がおすすめですが、事前によく手術を行うクリニックについて調べたり、リスクや問題点を理解し、少しでも不安を減らしてから手術を受けましょう。
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