様々な耳介変形について

様々な耳介変形について

生まれつきの耳の変形のことを「耳介変形」といいます。
代表的なものに「立ち耳」がありますが、その他にも様々な症状があります。
一体どんなものがあるのでしょうか?

耳介変形とは?

生まれつき耳の大きさや形が正常な耳と違うことがあり、これを「耳介変形」といいます。どの変形も、片側の耳だけのことも両側のこともあります。

耳介変形になってしまう原因は、母親のおなかの中で赤ん坊の耳ができる時期に、何かの理由で耳の形がうまくできないと生まれた時に変形が残ります。親からの遺伝や耳の周りの血管や筋肉の異常が原因と考えられることもありますが、本当の原因ははっきりと解明されていません。

耳の状態や変形具合によって、それぞれ治療法も異なります。
手術は、大人の場合は局所麻酔で行い、手術時間は症例にもよりますが片側30分~1時間程度です。手術はほとんどの場合、耳の裏側から切開をするので、目立つ場所に傷痕がくることはありません。
通常は日帰り手術で済みますが、変形が重度な場合や、小児の場合は入院が必要となることがあります。

耳介変形には様々な形態があります。
立ち耳、コップ耳、スタール耳、折れ耳、埋没耳、副耳など、その形態によって様々な呼称があります。これらの耳介変形は、放っておいても心配がないものから、普段生活をしていて支障をきたすものまであります。健康上悪影響がなくても、日常生活に悪影響を及ぼす場合には保険が適応されます。

今回は「スタール耳」「折れ耳」「埋没耳」「副耳」「小耳症」について触れていきます。

スタール耳

スタール耳とは先天性の耳の変形の一種で、通常は耳介の上部は丸い形状をしていますが、耳介の上部外側が尖ったような形状になっています。 これは耳の軟骨の形成異常が原因で、軟骨の曲がる方向に違いがあるだけで、見た目以外にさほど支障はありません。 非観血的治療に比較的よく反応します。

ですが、とくに西洋では悪魔的な印象を持たれたりする見た目が気になる特徴です。 手術で軟骨をふくめて形態を整えていきます。

スタール耳は保険適応が認められる場合がありますが、外見よりも機能障害の程度によって適応が限られると考えられます。


<治療法>
スタール耳の場合は第3脚という耳介軟骨によって引き起こされる耳介変形であるため、症状に合わせて、手術により耳介軟骨の変形を矯正し、固定します。

手術は大人の場合、局所麻酔で行い、手術時間は症例にもよりますが片側30分~1時間程度です。手術はほとんどの場合、耳の裏側より切開をするので、目につく位置に傷痕がくることはありません。
通常は日帰り手術となりますが、変形が重度な場合や、小児の場合は入院が必要となることがあります。

折れ耳

耳の軟骨が変形しており、耳の上部1/3が前方に垂れ下がってしまった状態の耳を「折れ耳」や「垂れ耳」と呼びます。耳の軟骨の形成異常によっておこることがほとんどです。
これは耳自体に影響があるわけではなく、音も問題なく聞こえます。 

折れ耳の原因は、これといってはっきりした証明がなく、考えられる要因としては様々にあげられています。
赤ちゃんが生まれた時から耳が折れた状態であれば、赤ちゃんがお腹の中にいた胎児時期に、耳に一定の圧力が長期間かかっていた可能性が考えられます。
出生してから起こった場合は、授乳の方向や寝る方向がいつも同じ向きだったりする事が関係していると考えられています。

折れ耳の折れ曲がりが重度の場合は、変形した軟骨の影響でメガネやマスクを使用することが出来ないなどの問題を乗じる場合があります。 しかし生活をしていて特に問題を感じない場合は、手術を行う必要はありません。 
折れ耳の治療は、見た目はもちろんですが、マスクや眼鏡のかけにくさなどが気になる場合に受ける方がほとんどです。


<治療法>
1歳未満で軟骨が柔らかいうちであれば、ワイヤーやテープなどを使って、理想的な位置に固定を行うことで、ある程度矯正することも可能です。装具で耳を固定する事により、成長するにつれて耳が正常な形に戻ります。
装具で効果がない場合や、幼児期以降の場合には、手術による治療を行うことになります。

埋没耳

埋没耳は「袋耳」とも呼ばれ、耳介の上部分の軟骨が変形して側頭部の皮膚の下に埋まったような状態です。

埋もれている部分の軟骨には頭側に折れ畳まれたような変形があります。指でつまんで引っぱると出てきますが、離すと元に戻ってしまいます。そのために、マスクや眼鏡がかけられません。
埋もれている耳の上半分には変形があることが多いですが、聴力は正常です。つまり、問題点としては機能的なものと整容的なものに分かれます。

片側性のことも両側性のこともあります。片側例では、よくみると反対側の耳介上半にも同様の変形があることがあります。

日本では400人に1人の割合で見られ、比較的多い変形です。男女比は2〜3:1、左右差は右:左=2:1、両側性が約30〜40%です。

発生原因としては、耳介後面の筋肉の異常によるものである、ということが有力です。
耳介の後面にいくつかの内耳介筋といわれる筋肉があります。イヌなどで遠くの音を聞く時に耳介を立てることができますが、まさにその筋肉の作用によるものです。ヒトではほとんど退化していますが、耳介の形状維持に関与しており、これらの筋肉の異常により変形を生じるとするものです。


<治療法>
装具を着けて矯正する方法と手術で治す方法があります。1歳頃までの耳の軟骨が軟らかい時期は矯正治療が可能ですが、変形の程度や状態によっては矯正が難しい場合もあります。

手術は矯正によっても治らない重症例や、矯正による治療が期待できない年齢に達している場合(小学校に入る前の5、6歳)で行うことが多いです。この時期には全身麻酔が必要で、埋没した耳介を引き出し、隣接する正常皮膚を移動して形成します。

副耳

副耳(ふくじ)とは、生まれつき見られる、耳の前から頬にかけてみられるイボ状の皮膚の隆起のことです。隆起物のなかは、軟らかい組織のみのものと、軟骨を含んでいるものとがあります。
片側の耳前部に1個だけ存在することがほとんどですが、時には両側に存在する場合や複数個存在する場合があります。

また、イボ状ではなく,おへそのように凹んだタイプもあります。出生1000に対して15の割合で発症すると言われ、生まれつきの変形としては比較的発症頻度の高いものです。遺伝性のこともあります。

副耳は皮膚のみではなく軟骨を含むことが多く、耳に近い場合には副耳と耳の軟骨同士が深いところでつながっていることもあります。

副耳とは、本来、耳を構成するはずの組織が耳に含まれずに離れた部位に独立してしまったものです。そのため、腫瘍のように次第に大きくなったり、悪性化して転移してしまうといったことはありませんが、正常な耳と同じように、成長とともに若干大きくなることがあります。

一方クビにも副耳のような突起が生まれつき見られることがあり,頸耳(けいじ)と呼ばれます。
他の奇形を合併しなければ機能的障害を引き起こすことはなく、見た目だけの問題なので、治療を急ぐ必要はありません。


<治療法>
小さいものや軟骨を含まないものは,生直後に無麻酔で絹糸やナイロン糸で根本をしばると副耳の先端に血流が行かなくなり、黒ずんで(壊死して)10日から2週間で自然脱落します。この方法を「結紮術」と言います。
しかし、糸で力任せにしばられるので、強い痛みを伴います。

軟骨を含む場合には、皮下の軟骨を含めて切除し、きれいに縫合します。形成外科専門医が、できるだけ術後にも傷跡が目立たなように閉鎖します。この方法を「副耳切除術」と言い、保険が適応されます。手術は30分程度で終了します。
手術時期は全身麻酔を行う場合は麻酔の安全性が高まる1歳前後以降が良いとされています。

いずれの場合にも目立たない程度の傷跡で治ります。特に耳前部の傷跡は目立たないことがほとんどです。ただし、治療中に感染を併発すると傷跡は目立ってしまうので、術後の消毒などはしっかりと行います。
一般的には、美容目的で就学前に治療を希望する人が多いです。

小耳症

小耳症(しょうじしょう)とは、生まれながらに耳介が小さく、一部あるいは大部分が欠損している状態です。1万人に1人程度に見られる稀な変形です。

欠損の状態によって様々な分類があります。
*第1度…耳の正常な形がかなり残っているもの。
*第2度…耳の形が一部残っているもの。
*第3度…単に皮膚と軟骨が残っているのみで耳の形を成していないもの。ピーナッツ型が最も多く見られるタイプです。
*無耳症…耳介を欠くものです。タイプによっては耳介はほとんど残存しません。

片方の耳が反対側よりやや小さいものから、ほとんど耳がない状態のものまで、様々な程度の小耳症があります。また両方の耳が小耳症のこともあります。
お母さんのおなかの中で耳が形作られる過程で何らかの異常をきたし、未発達のままで止まってしまったことで小耳症となります。重症なものでは耳の形だけでなく、耳の穴やもっと奥の音を感じる部分(中耳、内耳)にも形成不全がみられたり、場合によっては頬や下顎の骨の異常や、顔を動かす神経にも異常がみられることがあります。

耳の形ができあがらずにとても小さい状態で、耳たぶだけがあるタイプが多く、外見上の問題が大きい変形です。耳の穴がふさがっていることも多く、その場合は聴えも悪くなりますが、片側の聴覚が保たれていればあれば日常生活上さほど不自由はありません。両側の聴力障害がある場合には手術や補聴器の装着などの治療がすすめられます。
また、埋没耳と同じようにマスクや眼鏡がかけられないなどの問題があります。

一見問題がないように見える反対側の耳でも、聴力低下を伴っている可能性があるので、生後一度は聴力検査を行っておいた方がいいでしょう。 


<治療法>
小耳症の根本的な治療は、残念ながら手術をする以外ありません。皮膚、軟骨の状態により手術方法が異なりますが、複数回の手術を必要とします。

小耳症の手術は肋軟骨という胸の軟骨を使って作るのが一般的で、患者ご本人の胸の軟骨を使って耳の形を作る手術を2回か3回に分けて行います。
手術時期は胸囲60cm程度を目安とするので、10歳前後になります。形成外科と耳鼻科の専門医が協力して耳の穴を作る手術を行うこともあります。

まとめ

ひとことに「耳介変形」といっても様々な症状があり、私生活に支障が出てしまうものから、見た目の問題だけで健康には悪影響のないものまであります。

生まれつき耳介変形であると、それが当たり前となってしまって、治療ができることを知らずに大人になるケースもあります。
耳介変形は、症状によっては小さい時などまだ軟骨が柔らかい時に、矯正などの治療で対応することができます。
しかし、成人してからの治療では、大掛かりな手術でないと治療できないことがあります。手術をすることで、感染症など他のリスクも高くなってしまうので、耳の形に異常を感じたら、なるべく小さい時に病院で診てもらうことをおすすめします。

耳介変形によって、眼鏡やマスクが掛けづらい、聴こえが悪い、耳の形について何か周囲から言われる…といったことは、大人に限らず、子供にとっても大きな問題です。

耳の形がきれいになることで、ピアスやイヤリング、ショートヘアやアップスタイルをより楽しめるようになるのではないでしょうか?
自分や、自分の子供に耳の形に何か気になることがあれば、一度病院に相談してみるといいでしょう。

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