身長が伸ばせる!?”骨延長手術”について

身長が伸ばせる!?”骨延長手術”について

生まれつき脚の骨が曲がっていたり、ケガなどで曲がってしまったりした場合に、外科手術で「骨延長手術」というものがあります。この手術によって骨を伸ばすことができるため、低い身長をコンプレックスに感じている方が容姿改善目的で施術を希望する人が増えてきました。
元々医療目的であった「骨延長手術」とは、一体どのような手術なのでしょうか?

骨延長手術とは?

「骨延長手術」は、麻酔下に人工的に骨折させ(=骨切り)、その骨切りした部分が治癒する過程で生じる「未熟な骨の元(仮骨)」を術後にゆっくりと牽引することで骨を延長する治療法です。骨を牽引して延長するための電動ロッド(創外固定器)を取り付けるところまでが手術になります。治療の過程で発生する可能性のあるいくつかの合併症の可能性のために、治療を安定的に行うことができる医師は世界的にも多くありません。

骨延長手術は日本ではあまり知られていませんが、海外では一般的な手術であり、美容目的での骨延長手術が数多く行われています。実は、110年以上もの歴史があります。
旧ソビエト連邦のユダヤ人整形外科医師イリザロフ(故人)によってはじめられたと考えられており、「骨の長軸方向に引っ張る力を与えておくと骨折部に新たな骨が形成される」という概念を提唱していました。イリザロフの方法は長い間広まりませんでしたが、その優れた成績によって、やがて旧東ドイツを径由してイタリア、フランスに伝わり、1980年代の後半に初めてイリザロフ器械がアメリカに渡りました。その後アメリカでは主としてユダヤ系の整形外科医師によってイリザロフ法が広まっていきました。
最近では、最新の手術技術によって従来のものと比べて手順がより快適で安全になりました。また、長い年月を経て改良が重ねられ、創外固定の種類が増えて、安全性も高くなりました。


<主な対象者>
骨延長手術は元々、先天性奇形、病気による骨欠損、下肢の外傷等の医療上の理由で行われていました。しかし、1990年後半以降、身長を伸ばすことを目的としても行われており、低身長に対する治療としての大腿骨延長、下腿骨延長が行われています。これにより、別名「脚延長手術」とも呼ばれています。このような身長を高くする目的以外にも、O脚やX脚、足関節の変形を矯正することもできます。
上腕骨を延長することでお尻まで手が届かなかったのが届くようになったり、まっすぐ伸びなかったひじが伸ばせるようになり、低身長によるコンプレックスからも解放されます。
しかし、単に見た目を変えるための目的で、骨延長手術を受けることはおすすめしません。というのも、施術により感染、骨折、関節の変形等の合併症を伴う可能性があり、とてもリスクの高い手術だからです。


<適正年齢>
理論的には4歳頃から成人まで、どの年齢の方でも可能です。未成年の方が手術を受けられる際は保護者の方の同意書が必要になります。成人の方は保護者の同意書は必要ありません。
あまりにも年齢が低いと延長中の合併症に対応するのが難しかったり、延長中のリハビリテーションがスムーズにいかなかったりするケースがあります。一方、高年齢になると骨形成に時間がかかったりして、わずかな延長距離でも治療長期間が長くかかってしまいます。

知っておきたいデメリット・リスク

①合併症の恐れ

骨延長手術において最も大きなポイントは「合併症」のリスクです。難しい手術だからこそ、習熟している医師が治療を行わないと上手くいかないこともあります。正しい手術と適切な術後のリハビリテーションを行わなければ、膝が伸びなくなったり、足首の関節が背屈しにくくなったりする可能性があります。深刻な合併症の場合、足を失う可能性もあります。

合併症が軽度であれば治すことができても、治療困難となれば後遺症として残ってしまうでしょう。後遺症があると、身長は高くなれたとしても、今まで問題がなかった関節機能や運動機能に影響が出て、走りにくくなるなどの生活に支障をきたします。
骨延長の過程で骨が曲がってしまい、下肢の変形が残ってしまうことや、延長した骨の形成が悪く、予定よりも治療が長期に及んでしまうこともあります。

②長期的なリハビリ・ケア

手術後すぐにリハビリが始まり、”常に膝を伸ばして、かかとを地面につけて立てる状態の維持”また”歩行能力の維持”ができるよう行っていきます。
リハビリはハードなものになりますが、このリハビリによって結果が大きく左右されます。
また、使用される創外固定器は金属製のピンやワイヤーで骨とつながっていて、ピンやワイヤーは皮膚を貫いてるので日々のケアが大切です。体外に器械が突出しているために衣服に工夫が必要であることや、入浴・シャワーに制限があります。しかし、見た目は痛々しくても感染症などを起こさない限り痛みはありません。

骨延長の速さは1日に1mmを基準に仮骨のでき方によって調節しますが、仮骨のできが悪いと延長を中止します。予定通りの延長量に達したら、今度は仮骨が成熟して固い本当の骨になるまで待ち、完成されると創外固定器を除去して治療が完了します。おおよそ、1cm骨を伸ばすのに1か月かかる計算になります。
デリケートかつ手術後すぐに結果が現れる治療ではないので、骨の延長量によって治療にかかる期間は大きく異なります。その間、焦らず丁寧なリハビリとケアが必要とされます。

③保険適応外である

海外でも行われている手術ですが、日本では病気・ケガ以外の低身長に対する美容的骨延長術を行う際は保険診療が適応されません。つまり、治療に伴う医療費が全額自己負担となります。
それだけでなく、手術後は両足に創外固定器を装着して通院することになるので、病院までの行き来が大変です。そのため、治療を受ける多くの方が病院の近くにアパートやウィークリーマンションを借りてそこから通院しています。完治するまでは日常生活が今までのように過ごせなくなるので、治療費以外にも別途普段以上にお金がかかる可能性があることを知っておきましょう。

手術の流れ

①カウンセリング
手術をする前に、カウンセリングにて手術方法、注意点、術後のことなどを医師と話します。

②術前検査
採血や心電図、レントゲン検査、呼吸器検査をおこない、手術が可能か確認します。手術が決まり次第、術後に装着する装具などをつくります。

③手術
全身麻酔をした後に、片足ずつ手術を始めていきます。原則、両足同時に手術はせず、片足が終わると一定の期間をあけた後にもう片方の足を手術します。そうすることで、術後の痛みを最小限にし、合併症の危険性も軽減させることができます。
手術中の出血はほとんどありませんが、手術後1日ほどは少量の出血があります。手術は90分程で終了します。

④手術後
日々ケアをしつつリハビリを行い、予定の長さに骨が達したら延長を終了となります。その後は定期的に通院し、経過観察していきます。

まとめ

いかがでしたか?身長にコンプレックスを抱く人は男女問わず多く、特に日本は海外と比べても平均身長が低いことから、低身長の人の比率も多いです。
身長は遺伝だったり、生まれつきの問題でもあるので、一般的に行われている美容整形のように手術で改善されることはないと思う方も多いでしょう。しかし、本来医療目的として使われていた「骨延長手術」が、見た目の改善目的で身長を高くするべく手術を受けることができます。

大掛かりな手術であるが故に、デメリットやリスクも大きくなります。手術を希望する場合には、このマイナス面をしっかりと熟知した上で初めて治療を受けられるスタートラインに立つことができます。身長を伸ばしたい場合に手術を伴わない方法として、矯正装具や成長ホルモン等もあるので、合わせて知っておくと選択肢も広がります。

身長は誤摩化しや隠すこともできないので、一度コンプレックスに感じると常に気になってしまう方もいらっしゃるでしょう。永遠のコンプレックスとして諦めていた方も、この骨延長手術によって精神的な悩みから解放されます。
未だに一般化された手術ではなく、この治療ができる医師もそう多くないので知らない方も多い現状ですが、低身長を治したい方はリスクをよく知った上で手術を検討しましょう。

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